スポーツ指導を行っているとき、
- 思ったよりも、選手の成果が出ない
- 今の指導を続けていいのか不安
ということで悩んでいませんか?
選手の努力が無駄にならないようにするためにも、コーチは正しい方向へ選手を導く必要があります。
そのためには、指導者の視点だけでなく、審判員の視点を十分に理解しておく必要があります。とくに、体操競技やフィギュアスケートのような、動きそのものを評価する「採点競技」では、両者の視点を理解することはより必要です。
ここでは、「指導者と審判員の視点の違い」について、解説します。
各スポーツ種目のルールを理解することも必要ですが、ここでは指導者と審判員の視点の違いについて、焦点を当てます。
この記事を読むことで、両者の視点の違いが明確になります。そして、指導者として、目の前の学習者を良くするためには、どのような指導をすればいいのか、を決めるときに役立ちます。
どちらも「動き」を評価する
スポーツの現場、とくに試合の場面では、選手に対して指導者と審判員が関わります。
指導者でも、審判員でも見ているのは、選手(運動者)の「動き」です。その動きを見て、良し悪しを判断したり、優劣をつけるなど、動きの評価を行います。
この、「動きを見て評価する」という点については、指導者も審判員も同じです。
両者の違いは、良し悪しを判断する基準、つまり選手をみる視点が異なることにあります。
例えば、体操競技のゆかで、
「後方伸身宙返りの着地が止まった」動きをみたとき、それぞれどう評価するでしょうか?
審判員は現時点での評価
審判員は、「後方伸身宙返りの着地が止まった」動きをみたとき、
それに対して、着地が止まったと判断し、着地に対する減点はせずに採点します。
(ここでは、着地の姿勢や着地に至るまでの動きの評価に関しては割愛します)
選手が、初めて着地を止めたのか、いつも通りにやって止まったのか、それ以降全く止まることがないのか、そういった前後のことは関係ないのです。
審判員は、そのとき行われた一回の動きに対して、何かしらの評価をつけることになります。
つまり、審判員による選手の動きに対する評価は、選手の勝ち負けや、優劣をつけようとする視点からなされる、現時点での動きの良し悪しの評価であると言えます。
指導者は未来志向の評価
では、指導者の場合はどうでしょうか。
指導者は、「後方伸身宙返りの着地が止まった」動きをみたとき、
それに対して、
- 「よく着地を止めた!」と、良い評価を行うこともあれば、
- 「着地が止まるようではダメだ」と悪い評価を行うこともあります。
試合場面で勝ち負けがかかっているときには、前者のことの方が多いでしょう。
しかし、練習場面で発展技に向けて、「宙返りを高くする・回転力を高める」というような運動課題であったときはどうでしょうか。
この場合では、
着地が止まった = 高さや回転力がない(もっと高く!回転した方がいい!)
という、悪い評価をつけることがあるんですね。
そのため、たとえ試合場面で「着地が止まらなかった」としても、
勢いが余る宙返りだった = 次は発展技に挑戦できそう!
という、良い評価をつけることがあり得るのです。
つまり、指導者による学習者の動きに対する評価は、学習者の動きをより“良く”しようとしている未来志向の評価であると言えます。
まとめ
審判員によって行われる評価は、現時点での動きの評価
指導者によって行われる評価は、動きをより良くしようとする未来志向の評価
どちらの視点も重要です。しかし、指導者であるのにもかかわらず、現時点での評価として、欠点を指摘するばかりになってしまってはいけません。欠点の指摘ばかりでは、学習者のやる気を失わせてしまうこともあります。
目の前の結果を追い求めつつも、長い目でみて選手の動きがどうすれば理想像に近づくのか、を考えていかなければなりません。
指導者は、指導者として未来志向の評価をする視点を持ち続けることが重要です。これを失ったとき、指導者の存在意義が問われることになりますね。
以上、指導者と審判員の視点の違い、でした。