• 「○○な感じでやってみて!」と伝えても、そのとおりにできない…
  • 動きのどこが悪いかは分かるのに、どう直せばいいかが出てこない…
  • 将来コーチになりたいから、今なにかできることをしておきたい…!

運動を教える場面や、指導者を目指すなかで、このようなことはありませんか?

指導者が学習者に動きを教えるとき、必要になる能力が2つあります。

  • 運動を分析する能力
  • 運動を共感する能力

の2つです。

そして、この2つの能力は、自分自身で積み上げた運動経験が、そのまま土台になります。

この記事では、私のこれまでの選手としての経験と指導者としての経験から、

  • 指導者に必要な2つの能力
  • その2つが、なぜ指導に効くのか
  • 動けるうちにしておくべき3つのこと

について解説します。

この記事を読めば、いま動けるうちにやっておくと、指導者になったときに役立つことが分かるようになります。

将来コーチや体育の先生になりたい学生・現役の選手はもちろん、すでに指導をしていて、まだまだ自分も動けるという人も、ぜひ最後まで読んでいってください。

指導者に必要な2つの能力

はじめに、2つの能力がどういうものかを整理しておきます。

  • 運動を分析する能力 = 動きの感じがどうなっているかを、とらえる力
  • 運動を共感する能力 = 学習者がどんな感じでやっているかを、感じ取る力

どちらか一方では、指導はうまくいきません。

動きを分析できても、学習者がどんな感じでやっているかが分からなければ、かける言葉は学習者に届かないからです。

運動ができるようになる仕組みについては、別の記事で詳しく書いています。

まずは「分析する能力」から見ていきましょう!

能力①「運動を分析する能力」

「運動を分析する能力」とは、自分自身の動きの感じがどうなっているかをとらえる力のことです。

この能力があると、

  • 自分が行った動きが、よかったのか悪かったのかを判断する
  • 今のはこんな感じだったから、次はこんな感じでやろう、と当たりをつける

といったことができるようになります。

学習者にとって、上達していくうえで欠かせない力です。

そして、この力は指導者になっても必要です。

目の前の学習者の動きを見て、今どんな動きの状態で、次どうすればうまくできるのかを判断するとき、指導者自身の「運動を分析する能力」が必要なのです。

この分析ができないと、学習者の動きの欠点を指摘するだけの指導に陥りがちです。

「ひざが曲がっている」「もっと高く」と伝えるだけでは、学習者は次に何をすればよいか分かりません。

目の前の学習者に、具体的な次の目標像を示すには、自分の動きを分析できる能力に基づいた、「他者の動きの感じ」まで分析できる力が必要不可欠なのです。

声かけのレベルについては、別の記事で詳しく書いています。

「欠点を言うだけ」で終わっていないか、ふり返ってみましょう!

能力②「運動を共感する能力」

動きを分析できたとしても、それだけでは指導はうまくいきません。

分析できるだけでは、言葉が届かない

学習者に動きを教えるとき、

  • 今のは△△がよくなかったな
  • もっと○○な感じのほうがうまくいくかな?

などと考えて、「○○な感じでやってみて!」と伝えることがあると思います。

ところが、学習者がその感じでやろうとしても、うまくいかないことがあります。

学習者からすれば、「言われたことをやろうとしても、うまくできない」という状況です。

たとえ指導者にとって「○○な感じ」が正しくても、こうしたことは起こります。

では、どうして学習者はその感じでできないのでしょうか。

それは、指導者の「共感する能力」が足りていないからです。

指導者が動きを見て「○○がよくない」と感じたとき、学習者はその動きをどんな感じでやっているのかを考える必要があります。

  • わざとその動きにしているのか
  • 何かを意識していて、その動きになってしまっているのか
  • 怖さなどがあって、思うように動けていないのか
  • まったく無意識のうちに、そうなってしまっているのか

見た目は同じ動きでも、学習者の中で起きていることはまるで違います。

つまり、学習者の感じの世界に入ったうえで指導することが重要になってきます。

学習者の感覚の世界については、別の記事で詳しく書いています。

共感できるレベルには差がある

ひとくちに「共感する」といっても、深く共感できる場合と、なんとなく共感する場合があります。

たとえば、目の前で人がすべって転び、地面に顔をぶつけたとします。

思わず顔をそむけて、「痛っ!」と言ってしまいますよね。これはまさに共感できている状態です。

では、目の前でギックリ腰になった人がいたら、どうでしょうか。

  • 「うわ!それは痛い……」と、深く共感できる人
  • 「なんだか痛そう……」と、なんとなく共感する人

この差は、ギックリ腰を経験したことがあるかどうかで大きく変わります。

経験したことがある人は、目の前の人の痛みを、そのまま丸ごと共感することができます。

一方、経験したことのない人は、「捻挫のような痛みが腰にあるのかな?」「ぶつけたような痛みなのかな?」というように、自分の経験したことのある痛みに置き換えて共感することになります。

つまり、自分の経験と似ていれば似ているほど、その感じに深く共感できるということです。

運動の指導でも、まったく同じことが起こります。

自分が経験したことのある動きであれば、学習者が「どんな感じでやっているのか」を、より近いところから感じ取ることができます。

経験していないことには、深く共感しにくいのです。

動けるうちにしておくべき3つのこと

ここまで見てきた2つの能力は、どちらも運動経験によって育ちます。

そして運動経験は、自分の身体が思うように動くうちにしか積めません。

ここからは、動けるうちにしておくべきことを3つ紹介します。

いま学生・選手の人も、まだ動ける指導者の人も、今日からできることです!

①自分の動きの感じを振り返る

やること:技や動きをやったあとに、今どんな感じでやっていたかを思い返します。

うまくいったときも、いかなかったときも、「どこがどんな感じだったか」を言葉にしてみましょう。

ここでは、映像で自分の動きを見るのではなく、自分の動きがどんな感じであったかを振り返るようにしてください。

なぜ役立つのか:動きを修正するとき、まず自分の動きの感じを自覚することがスタートになるからです。

自分がどんな感じでやっているか、動いているときにどこに欠点があるかを自覚できなければ、意識的に自分の動きをよくしていくことはできません。

この積み重ねが、そのまま「運動を分析する能力」になります。

学習者であるときから動きを振り返る経験を積んできた人ほど、指導者になってからも鋭い分析ができると言われています。

さらには、その動きの感じを言語化できていると、指導者になったときにより役に立ちます。

②やったことのない技や動きを経験する

やること:自分の得意な動きや技だけでなく、他のことも経験しておきます。

やったことのない技、ふだんやらない種目、苦手な動き。できるようにならなくても構いません。

できるようになろうと試みて、その動きを経験しておくことが大切です。

なぜ役立つのか:同じような動きをしている人の、動きの感じを共感しやすくなるからです。

ギックリ腰の話と同じです。自分がやったことのある動きなら、学習者がつまずいている感じを、より共感してとらえることができます。

ある動きができなかった経験も財産になります。できない人の気持ちが分かるのは、できなかったことがある人だけです。

③同じ技を、違うやり方・違う条件でやってみる

やること:すでにできる技を、いつもと違うやりかたや条件でやってみます。

  • やり方を変えてみる(スピード、身体の使い方、リズムなど)
  • 場所や道具の条件を変えてみる
  • 試合や人前など、緊張した場面でやってみる

なぜ役立つのか:いつもできる技が、違う感覚になってしまうことにも共感しやすくなるからです。

これは、競技のコーチにはとくに必要です。

勝負のかかった試合や、たくさんの観客がいる試合など、緊張した場面では思うように身体が動かなくなってしまうことは多くあります。

このときの動きの感覚を経験していないと、それを「メンタルが弱いから」の一言で片づけてしまうことになりかねません。

まとめ

今回は、指導者に必要な2つの能力と、動けるうちにしておくべき3つのことについてお話ししました。

指導者に必要な2つの能力

  • 能力①:運動を分析する能力
  • 能力②:運動を共感する能力

動けるうちにしておくべき3つのこと

  • ①自分の動きの感じを振り返る
  • ②やったことのない技や動きを経験する
  • ③同じ技を、違うやり方・違う条件でやってみる

ここで1つ、覚えておいてほしいことがあります。

かなりの天才肌で、自分の動きを分析しなくても、何も考えずに感覚でできてしまうという選手がいます。

そういう選手は、指導者になってから苦労するとも言われています。

競技力がずば抜けて高くても、「運動を分析する能力」が育っていないと、指導者になって教えるときに困ってしまうのです。

だからこそ、できるかできないかだけでなく、「どんな感じでやっているか」に目を向ける経験を、動けるうちに積んでおいてほしいと思います。

すでに指導者になっている方でも、まだ動けるのであれば遅くはありません。今目の前で教えている動きを自分でも挑戦してみたり、昔とは違うやり方でやってみたりする経験が、そのまま指導に活きてきます。

競技や立場によって、必要な経験は変わってきます。今回は、私のこれまでの指導と学習の経験から、多くの人に役立つと思うことをあげました。参考になれば幸いです。

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