スポーツ運動学

運動をできるようにする2つの能力

  • 子どもたち生徒が自分で考えて、技や動きを習得できるようになってほしい!
  • 指導者が見ていなくてもどんどん上手になってほしい!!
  • 主体的に動いてほしい!!!

と、思ったことはありませんか?

同じような練習をしている集団の中でも、

気づいたら勝手に上手になっている子どもや
教えていない技がいつの間にかできるようになっている生徒

などがいて、驚くことが多くあります。

できることなら、意図的に指導者が教えていないときでも、ぐんぐんと技を身につけて成長してくれる子に育てたいですよね。

私も選手が考えて練習できるようになってほしいと思うと、

今ここでアドバイスを全部言ってしまっていいのか?
もっと学習者に考えさせた方がいいのか?

と、今どのように指導をするべきか?を悩んでしまうことがあります。

そこで、今回は運動指導をする上で重要となる、「運動をできるようにする2つの能力」について説明します。

この記事を読むことで、「運動をできるようにする2つ能力」が分かり、自分で考えて上手になる選手にはどんな能力が身についているのかが理解できるようになります。

「どちらの能力を伸ばしたいのか」を決めることで、
今目の前の学習者にどんな言葉かけをするとよいのか、が見えてきます。

運動を達成する能力

運動をできるようにする2つの能力のうち、1つめは「運動を達成する能力」です。
これは、実際に動きや技ができることを可能にしている能力です。

例えば、鉄棒の逆上がりであれば、

  • 足を振り上げてぐるっと回るなどの「コツ」 
  • 棒の高さやそのときの地面の固さなどに対応する「カン」 
  • 腕を曲げて身体を浮かせたりする体力的な要素 など

「逆上がりをする」ということを可能にしている総合的な能力のことです。

一般に、”運動を教える”というとき、目標となる動きや技の「コツ」とか「やりかた」を教えるということをイメージすると思います。

逆上がりの例でいえば、

  • もっと足を振り上げて!
  • もう少し強く踏み込んだ方がいい!
  • 肘をぐっと曲げたままやってみて!

などとアドバイスすることが、「コツ」や「やりかた」を教えるということです。

このように「コツを教える」とか、「やりかたを教える」というのが、「運動を達成する能力」を伸ばしているということになります。

運動をできるようにするもう一つの能力

運動をできるようにする、もう一つの能力は、「運動を分析する能力」です。

すでに逆上がりができる人でも、

「どうして自分が逆上がりができるのか分からない」、「逆上がりをしているときどんな感じになっているのか分からない」、「動いているときにどこも意識できていない」

ということがあります。

幼児などの小さな子どもであれば、
「どうやったら逆上がりができたの?」と聞いても、「分かんなーい!」とか、首を傾げて不思議な顔をするだけで応えないなど、自分の動きについて分かっていない子がほとんどです

大人である私たちでさえも、
「どうやって自転車に乗っているの?」と突然聞かれてもうまく言葉にできないのではないでしょうか?

また、初めてできるようになった動きや技については、「できた」という事実は分かるけれど、なぜ「できた」かは分からない、ということは普通にあることはないでしょうか

一方で、子ども大人に関係なく、
「できた」ときの自分の「できた状態」や、できないときの「できない状態」を細かく分析して、「どうすればよりよくできるようになるか?」を適切に評価できる人もいます。

  • 足の振り上げが足りなかったから、もっと強くやってみよう
  • もう少し強く踏み込んだ方がよさそう
  • 身体が離れるからもっと腕に力を入れてやるとできそう

などと、自らの動きを自分で分析して、次にやる動きを決めていく、という練習をする人がいるのです。

このとき、自分の動きがどうなっているのかを分析できる能力が、「運動を分析できる能力」です。

どちらの能力を伸ばすのがいいか?

  • 運動を達成する能力
  • 運動を分析する能力

どちらの能力も必要ですし、指導者は学習者のどちらの能力も伸ばすべきと言えます。

一つ注意点があります。

それは、「運動を達成する能力」を教えるときに「運動を分析する能力」を伸ばす機会を失っていないか? ということです。

何かの動き・技を習得させたいというときに、「このやり方が正しい!」「今のはだめ、もっとこうやって!」というような言葉かけや指導を毎回行うと素直な学習者ほど、指導者の言うことを聞いて、その通りに行おうとします。

これでは、その動きができるようになったとしても、自分で自分の動きを分析して、自らコツを見つける、見つけようとする機会は失ってしまいます。

極端に言ってしまうと、指導者がみていなければ、まったく成長しない学習者になってしまう可能性があります。

では、指導者はどうすればいいのでしょうか?

初めから学習者自身に考えさせようと、考える時間だけ与えても、手かがりがなければ学習者は良いも悪いも判断できません。

学習者に対して、「こういう感じでやってごらん?」「次○○を意識してやってみて」などと言葉かけやアドバイスをした上で、

「さっきのと今のとではどっちの方がよかった?」
「今の動きはどんな感じだった?」

といった問いかけを行うことで、自分の動きの感じを振り返る機会を与えてあげます。

そして、まずは自分の動きの良し悪しを判断させる、そして自分の動きの感じを具体的な言葉で捉える、というようにまずは○か×かから、徐々具体的な振り返りができるようにしてあげましょう。

そうした機会を与えてあげることで、「運動を達成する能力」を身につけつつ、「運動を分析する能力」も身につけていくことができます。

もちろん、学習者の年齢や性格、運動レベルによって、どんな問いかけをするかは工夫する必要はあります。

運動を分析する能力を十分につけさせることができれば、学習者は指導者がみていなくても、練習の方向さえ示せば自ら成長してくれることを期待できます。

まとめ

運動をできるようにする2つの能力について、紹介してきました。

指導者は、学習者にどちらの能力も身につけさせる必要があります。

その際、技のコツを伝える助言やアドバイスを多くするのか動きの感じを振り返させる問いかけを多くするのか、それは指導者次第です。

今目の前の学習者に対して、

  • すぐにでも動きを習得させたいのか
  • 学習者が自ら動きを習得できるようにさせたいのか

どちらでしょうか?

指導者はそういった目的・目標を明確にして、指導していく必要があります。

目の前の選手、生徒がより良くなることを願っております。

以上、運動をできるようにする2つの能力、でした。


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