スポーツ運動学

言ってもやらないのは本人のやる気の問題??

体育の授業やスポーツの現場で、生徒や子どもたちが

  • 課題を教えても、やろうとしない
  • お手本をみせても、やってみてくれない
  • 他の子に隠れて、全くやろうとしない

これらに当てはまることはありませんか?

このとき、やってくれないの本人のやる気がないからでしょうか?

やってくれないのは、本人のやる気の問題ではありません。

「そもそも生徒や子どもたちのやる気はどこから湧いてくるのか」

この点を掘り下げて、スポーツ運動学の立場から解説します。

この記事では、「そもそも生徒や子どもたちのやる気はどこから湧いてくるのか」という点について、スポーツ運動学の立場から解説します。

この記事を読むことで、体育授業やスポーツの現場において、学習者のやる気はどこから出てくるのか、が分かるようになります。

子どもたちのやる気を引き出すためには、
まずそのやる気の根源を知ることが大切です。

やる気は頭で考えて出てくるものではない

先生やコーチから出された課題や動きを、学習者が「やってみたい」とか「やりたくない」と思うのは、頭で考えて出てきていることなのでしょうか?

ある例をあげて、考えてみましょう。

あなたは、幅跳びで1m以上は跳べるという能力があるとします。

そして、先生に高層ビルの屋上へ連れていかれて、「向こう側のビルへ跳び移ってみて。ビルとビルの間は1mだから、能力的には跳べるはずだ!」と言われたらどうでしょうか?

(なんで跳ばなきゃいけないの?という疑問はさておき、)

きっと足がすくんで跳べないですよね……。

もちろん、高いことなんかお構いなしに、なんなくビルの間を跳び越えてしまう人もいることでしょう。

足がすくんで跳べない人にとっては、跳べるかどうかを考えるよりも先に、「跳べそうにない」「できそうにない」という気持ちが湧き上がっているでしょう。

つまり、頭で何かを考えるよりも先に、身体が無意識のうちに「できそう」か「できそうにない」かを判断しているのです。

「やってみたい」「やりたくない」とか、「できそう」「できそうにない」という気持ちは、頭で考えるよりも先に、身体が感じてしまっているのです。

どうしてやる気が出ないかは本人もわからない

足がすくんで跳べない人は、跳ぶ跳ばないを考える前から、「できそうにない」と感じてしまっています。

つまり、無意識のうちにそう感じてしまっているのです。

この場合、地上では、1m以上幅跳びをできるのですから、

「あ、高いから怖いんだ」
「落ちるかもしれないから怖いんだ」

と、後から自分で気づくことはできます。

では、スポーツの現場で、学習者が「やりたくない」とか「できそうにない」
感じてしまうのはどのようなときでしょうか。

運動課題が難しすぎる…
やるのが怖い…
どう動けばいいのかまったくわからない…
失敗したら恥ずかしい…

などと、その原因は様々なことが考えられます。

学習者本人は単に「やりたくない」と言う場合でも、それを発言する前に、無意識のうちにそう感じてしまっているのですから、

なぜ「やりたくないのか」は、本人にとっても明確にはわからないのです。

「やらなければならない」状況は運動嫌いを生む

では、やる気の出ない子に対して、どのように関わればよいのでしょうか。

足がすくんで跳べない人に対して、「やる気を出せ!」と言えば跳べるでしょうか。

跳ばなければ痛い目に合わせる

跳ぶことができれば賞金をあげる

というように、罰や報酬を与えることで、そのとき跳べることがあるかもしれません。

しかし、それは
「できそうにない」という身体の状態に対して、「やらなければならない」という感情が上回っているだけです。

一度跳んだとしても、その後やらなければならない状況でなければ、決して跳ぶことはないでしょう。

同じことが、スポーツの現場では起きていないでしょうか?

学習者本人が「やりたい」「できそう」と思えていないのに、

○○をやらないと、

「良い成績をあげないよ」
「できないと単位を出さない」
「できたら終わっていいよ」

などと、やらなければならない状況をつくっていることは少なくないでしょう。

ましてや、「やりたくない」と感じている子に、「やる気を出せ!」と怒って無理にやらせるのは、子どもや生徒にとってはただ「やらされているだけ」です。

たとえ、無理にやらされてその運動課題ができたとしても、「これでもうその動きをやらなくてすむ」、というように、その子が運動嫌いになってしまう可能性があります。

学習者の無意識の世界へ入り込む

学習者が「やりたくない」というときには、

「どうしてやりたくないの?」と本人に聞いて、その原因を突き止めることも必要です。

しかし、その原因は、無意識に感じてしまっているところにあるのですから、本人もわからないということは多くあります。

だからこそ、指導者が学習者に寄り添うことが必要です。

難しすぎるのかな?
→もっと簡単な課題ならできるかな?

○○になるのが怖いのかな?
→マットを使ってみようかな?

ポイントがわからないのかな?
→別の言葉で伝えてみようかな?

見られるのが嫌なのかな?
→場づくりを工夫しようかな?

などと、色んな角度から考えてみると、学習者の「やってみたい」「できそう」を引き出すことができるでしょう。

学習者本人でさえもよくわかっていない、無意識の世界のことを考えて、学習者へ寄り添い指導を変えていく必要があるのです。

まとめ

体育授業やスポーツの現場で、生徒や子どもたちが運動課題をがやろうとしないのは、「やる気」がないのではなく、無意識うちから「やってみたい」と思えていないのです。

学習者の「やる気」をいかに引き出すは、指導者の腕の見せ所です。

学習者が、心底「やってみたい」と思えるように、指導者は学習者の無意識の世界にまで入り込み課題の設定やお手本の見せ方など工夫する必要があります。

学習者の無意識の世界にまで寄り添った、指導ができる先生・コーチが増えることを願っています!

以上、言ってもやらないのは本人のやる気の問題??、についてでした。

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